スーパーおかあさん

雨がしばらく続いて寒かった。春に向かっていると思ったのにそれは勘違いで、また冬が来るんじゃないかと錯覚するくらいだった。
空が暗いとからだが動かない。予定がないことにかこつけて、休みは寝て終わってしまった。
三寒四温にもほどがない?などとぶつぶつ言いつつ、一日仕事を終えて外に出たら、打ってかわって今日は夏だった。

生ぬるい気だるい空気って、しまってあった感情をどろどろ連れてくるよね。なんだか思い出したくない事をひとつふたつ思い起こし、きつく閉めといたはずの感情がまたぬるりと溢れて来てしまって、どうしようか人生よ。あまりの速度でぶつかってきてくれるもんだから、対処の方法がわからない。結局寒くても暑くてもうまくいかない。

そうやってどろどろぬるぬるしていても、今日はこなさなければならないミッションがある。仕事を定時そこそこで切り上げて、職場の一番近くのデパートへ行った。まとわりついていたぬるい空気は、店内には入ってこれない。

そのまま地下へ進む。だいたい見る売り場は決まっていて、あとは細かい品定めをするだけだった。

おつまみの缶詰めが私の身長を越した棚にずらりと並んでいて、そこで足を止める。今は本当にいろんな種類があって、牡蛎やタコのオイル付けや牛をワインで煮込んだもの、角煮や、ベーコンやたまごの薫製などがすべてそれぞれ缶詰めになっている。3つ4つ手に取りつつそろそろレジに行こうかと思っていると、店員さんが買い物カゴ渡してくれた。
すぐレジに行くのも申し訳なくなって、もうひと悩みする。結局、¥2,000するウニのコンソメジュレはやめておいた。

レジへ向かうとさっきの店員さんがラッピングにしますか?と聞いてくれた。せっかくだし、と思いお願いするとリボンの色を選ばせてくれる。薄い水色、明るいオレンジ、優しいピンクとあったけど、深い赤のリボンにしてもらった。
丁寧に、丁寧すぎるくらいにキレイに包まれたそれを受けとる。店員さんは母というよりは祖母くらいの年齢に見えた。にこやかな笑顔と深いシワ。ありがとうございます、と丁寧に見送ってくれた。

私の母はスーパーマンだと思う。男の人にまじって肉体労働のパートをしていて、頑張りが認められて4月からは社員になった。そう若くない母の年齢からすると、とてもすごいことだった。それに加えて帰ってきてから家事をしている。仕事の日にはお弁当も持たせてくれる。私が実家にもどってきてから甘えっぱなしで、本当に頭があがらない。

よく働いて、ガサツに笑って、ちょっと抜けてて、甘いものが苦手で、お酒が大好きな母。いつも家族のためにお金を使って、決して贅沢をしない母。

帰り道、母に渡すところを想像する。きっと困ったように笑って「そんな気にしなくていいのに」と言うだろう。「自分のためにちゃんとお金貯めときなさい」とも言われるかもしれない。

でもいいじゃない今日くらい、あなたの日なんだからさ。と言いつつ1日遅れてごめん。忘れてた訳じゃないんだよ。いつもありがとう。


今週のお題「おかあさん」