結婚式で無敵だったときを思い出した

いつのまにか、紙で切った指の傷が治るのに一週間以上かかるようになってしまった


進学してセーラー服をブレザーに着替えたあのころ、制服を着るのが好きだった いとこのお下がりだったけど、チェックのスカートとリボンはお気に入りだった

毎日バイトに明け暮れていた 放課後も含めて週に5日は働いて、16歳にとっては大金を毎月もらった そのお金を握って友達とちょっと遠出して服を買うのが何よりもの楽しみだった 1日中歩き回ったって平気だった

そんなことをしながらもキチンと貯金もしていた 3年間働いて貯めたお金は、自動車教習所に2回通ってもお釣がくるほどの金額になった(もちろん実際に通ったのは1回だけれども)

よく働いて、よく遊んで、よく笑った 自分で言うのもなんだけど、ちゃんと女子高生をやっていたと思う あの頃の私は間違いなく"無敵"だった

過去は往々にして美化されがちだけれど、自分の高校時代も例外でないのかもしれない 当時を思い出す時大抵白くかすんでいて、キラキラしていて眩しくて目を細めたくなる


あの時とはいろいろなことが変わってしまったと思う
お気に入りだったチェックのスカートを着ることはもうないし、週5のアルバイトは事務に変わった 相変わらず服を買うのは好きだけどひとりで見に行くようになったし、当時とは趣味もまったくちがう とったばかりの頃は恐る恐るだった運転も、今は通勤の必須手段になった
変わろうと思って変わったわけではないのに、あの頃のキラキラはいつの間にどこかへいってしまったんだろう

そんな生活の中にも、キラキラはある

先日友達の結婚式に呼んでもらった 記憶もないくらい幼い頃を除けば、はじめての結婚式だった
友達とは久しく会っていなくて、なんだかんだ2年ぶりくらいだった 手持ちのものがなにもなくて、服から小物からすべて揃えた

共通の友達と昔話をしながら会場に向かった 無敵だったあの頃のことをぽつぽつと話した ああ、やっぱりキラキラしていた、と思う

落ち着かない会場で、新郎新婦入場の時がきた 音楽がだんだん大きくなって扉が開かれたとき、久しぶりの友達を見た瞬間、まったくそんな気はなかったのに無意識に涙がこみあげた ドレスを身に纏って満面の笑みの彼女は、まさしくキラキラしていた

泣くのはなんか恥ずかしくて、グッとこらえた ふととなりを見ると、友達も目に涙をためて満面の笑みだった ドレス姿の彼女は幸福そのものだった

キラキラは当時とはちがう形をしてやってきた

あまりにも遠くに来てしまったと思う 無敵だったあの頃には帰れない でも、遠く歩いてきた時間の先にこんな幸せがあるのなら

私もまた無敵になれるかもしれない